症例集

2017.10.22更新

今回はあまりにも巨大だった子宮癌の猫ちゃんの症例です。

12歳の猫ちゃんが、お腹が膨れてきたとのことで来院しました。触ってみるとあまりにも腫れているので、すぐに検査となりました。

子宮癌 猫レントゲン画像です。お腹が真っ白です。

こんな状態でも食欲はそこそこある、ということでした。

お腹に水が溜まるとこのように全体的に真っ白に映ります。しかし今回は超音波検査で腹水ではなくなんらかの腫瘤と判明しました。

超音波検査で中身に液体を大量に含んだ腫瘤が確認できました。あまりにも巨大で肝臓 腎臓 脾臓 膀胱 消化管、全ての臓器と接して映るのでどの臓器が発生源か不明である、しかし通常はこのようにあまりにも巨大になっても死に至ることがなく食欲の低下がなく、液体を大量に含む臓器は子宮である可能性が高いので、開腹手術となりました。

猫 子宮腫瘍やっぱり子宮でした。私の手と同じくらいの腫瘍でした。私の手でつまんでるのが正常な方ですね。

尿管への癒着や巻き込みが心配でしたが、なんとか尿管と分離して摘出できました。周囲臓器への癒着もありませんでした。

病理診断は子宮腺癌、平滑筋肉腫でした。癌が血管の中に入り込んでる所見はなく、完全切除できているとのことでした。腫瘍の重さは1kgもありました。体重は4.6kgでしたからおよそ体重の1/4です、人間に例えた10〜15kgの腫瘍となります、、、

今後は抗癌剤はしないで経過観察となりました。

抗癌剤せず無治療ですが、約1年半経過しましたが今も元気に過ごしているそうです。

 

猫 子宮癌 摘出手術 1〜5日入院 費用総額6万〜15万円(腫瘍の大きさによります、非常に小さく通常の避妊手術とあまり変わらなければ6万ほど、今回のように巨大で難易度が高ければ15万円ほど)

 

 

投稿者: アプリコット動物病院

2017.10.22更新

今回は猫ちゃんの消化管の癌のお話です。

最近 元気食欲がなく痩せてきた、よく吐くとのことでご来院しました、14歳と若くないので血液検査 レントゲン 超音波検査を実施しました。

レントゲンではイマイチパッとした結果が得られませんでしたが、超音波検査で消化管に腫瘤があることが判明しました。悪性腫瘍の可能性が高いことをお話しし、手術となりました。

猫 盲腸腫瘍盲腸〜大腸領域に消化管から外側に飛び出している腫瘤が認められました。

盲腸癌 腸間膜転移残念ながら、腸間膜に転移所見も認められました。進行性の腫瘍が疑われます。

盲腸癌 手術後肉眼で見える範囲で病変は全て切除し大腸と小腸を縫い合わせました、大腸と小腸は太さが違うので大腸の切り口を縫い縮めてから小腸と縫合しました。大変でした。

術後は消化管を切ったのでしばらく高栄養点滴だけで飲食はさせません、化膿止めの抗生剤、痛み止めなどを注射し、元気食欲が戻ってきて排便を確認してから、7日ほど入院して退院となりました。

診断名は、大腸癌でした。

肉眼で見える範囲の病変は切り取りましたが、すでに消化管の外にまで腫瘍が飛び出していて腸間膜にも転移所見が認められたので、延命を期待して抗癌剤のお話をしましたが、とりあえず今は元気食欲が戻っているので抗癌剤はせずに経過観察となりました。

14歳にもなってくると、病気ではなくても自然と食が細くなって痩せてもきます、、病気なのかどうなのか?の見極めは難しく、やはり血液検査やレントゲンや超音波検査などで見つけて行くしかありません。

お年を召してきて 食が細かったな、痩せてきたな、と思いましたら、やはり健康診断的に検査をお勧めします。

 

猫 大腸癌切除 小腸大腸吻合 5〜7日入院 入院費総額15〜18万円 (腫瘍の大きさ 難易度による)

 

投稿者: アプリコット動物病院

2017.10.22更新

今回はワンちゃん猫ちゃんの目の話です。

自宅でシャンプーしたら、それ以降目が開かない、痛そうにしているとのことでご来院されました。

角膜潰瘍 犬

なんだか、目が光沢ある側とザラザラの側と、肉眼でもはっきりわかりますね。角膜表層の細胞が損傷を受けてしまったのですね。

肉眼でも十分なんですが、損傷部位の広さと深さを確認するために 角膜の染色検査を実施します。

角膜潰瘍 フローレス染色

角膜の損傷部位を染める特殊な染色液を角膜に滴下すると、損傷部位が緑色に染まります。 損傷部位は角膜半分を占め、かなり大きいですがあまり深くはないようです。角膜表層が削れてしまったのですね、シャンプー中に飼い主様の指が当たってしまったのか、ワンちゃんが自分でこすってしまったのか、定かではありません。

基本的にはまずは内科治療をします、角膜保護剤と抗生剤点眼をしっかり点眼して、ワンちゃんが自分でこすってしまうのを防ぐためエリザベスカラーを装着して、一般的な角膜潰瘍なら傷の大きさやご自宅での点眼状況によりますが10〜14日でほとんどの傷は治ります。

治りが悪い場合は、逆さまつ毛があったり、点眼が不適切だったり、糖尿病やホルモン疾患などがあったり、エリザベスカラーを着けないでワンちゃんが自分で擦っていたり、、、などなどです。

ご自宅で点眼ができない場合は 数日間点眼入院や外科的介入(角膜保護のために瞼を一時的に塗って閉じたりetc)を検討します。

このワンちゃんは ご自宅での性格がやんちゃだったので、一時的眼瞼縫合と瞬膜フラップを実施して、点眼通院してもらい14日で完治しました。

投稿者: アプリコット動物病院

2017.10.21更新

今回は ワンちゃんの泌尿器結石のお話です。猫ちゃんの泌尿器結石は過去にもお話ししましたが、ワンちゃんにも多い病気です。

最近、元気食欲が無く痩せてきたということでご来院ました、4歳のチワワです。

レントゲンを撮ると 巨大な結石が複数あり、左腎臓が著しく腫れていました。

犬 膀胱結石 腎結石左腎臓左腎臓の腫れと巨大な結石が複数ありました。

犬 腎結石 左腎臓超音波検査では左腎臓は構造が崩壊しており、水腎症になっておりました(腎臓が水風船のように膨らむ)。

犬 腎結石 右腎右腎は超音波検査では正常でした。(赤と青は正常な腎臓血液の流れ)

血液検査では貧血がありましたが、腎臓の数値は正常でした。

検査結果としては膀胱結石・尿管結石により左尿管完全閉塞・水腎症という診断です。治療法は早期発見で軽度の水腎症なら尿管の閉塞を解除すれば腎臓は元に戻りますが、このように重度の水腎症になってしまったらもう手術で摘出するしかありません。

犬 水腎症摘出しました、3kg程度のチワワなら正常な尿管の太さは爪楊枝程度ですが、重度に拡張していました。炎症により周囲に重度に癒着し、尿管も著しく蛇行していたので大変でした、、、

犬 尿管結石尿管の先端に結石が詰まってました。

犬 結石巨大な膀胱結石のほか尿道に詰まっていた石も全て摘出できました!

手術後2日ほど元気はありませんでしたが、3日目位から食欲が出て元気になりました! その後、片腎だけで大丈夫かどうか腎臓の数値を血液検査して、問題無いので退院となりました。

検査の結果、結石はリン酸カルシウムという成分の結石でした。この石は基本的に食事療法が効きにくい結石です、食事療法と同時に利尿を促し結石の発生を抑えるサプリメントを長期にわたり使用していきます。 残ったもう片方の腎臓に結石が出来たら命に関わります。

結石にも色々な種類があります。膀胱に結石が発生したら、食事療法をしばらく続けても溶ける見込みがなければ手術も考えなければいけません。

手術をして結石の成分を分析して、対策を練ることが重要です。

犬 小型犬 膀胱結石 尿管結石 水腎症 摘出手術 5〜7日入院 費用総額 15〜20万円(結石の数、摘出難易度による)

 

 

投稿者: アプリコット動物病院

2017.10.18更新

今回は猫ちゃんの抜爪手術のお話です。

猫さんのお爪を摘出してしまう手術です。これには様々な意見が賛否両論あるでしょう。基本的に本院は積極的にオススメします。

猫ちゃんのお爪きり、お利口さんは大人しく切らせてくれるのですが、やんちゃな子は病院でもエリザベスカラーをつけて3人がかりで押さえつけて切ることもあります。暴れて悲鳴をあげる子もいます、猫ちゃんにも非常に大きなストレスとなります。そして爪は切っても当然すぐに伸びてきますので、またしばらくしたら切らなくてはいけません。これを繰り返すのはとても残酷です。

しかし可哀想だからと切らないでいると爪が伸びすぎて肉球に刺さってしまいます(爪とぎが不十分な老猫に多い)。爪は一生に渡って切らなくてはいけないのです。

また、人間側の問題として、ご自宅での爪とぎ行為により、壁紙やソファーなどがボロボロになってしまうという事もなくなります。

 

お利口な猫ちゃんなら良いでしょう、定期的に爪を切る事で何の問題もありません。

しかし、やんちゃな猫さんが大暴れで悲鳴をあげるような爪きりを一生に渡って行うのは、そちらの方が可哀想だと思います、爪をとってしまえば一生苦痛の爪切りから解放されます。

本院が積極的に抜爪術をオススメする理由は、炭酸ガスレーザーの導入によります。

過去、炭酸ガスレーザー導入前は飼い主様の強い依頼があれば電気メスや通常のメス刃で抜爪術を行なっておりましたが、術後テーピングも必要で敏感な指先の手術なので痛みもあります。指も腫れてビッコを引きます。4〜7日入院してました。猫ちゃんにとっても人間にとっても大変な手術でした。

しかし炭酸ガスレーザーを使用して手術すると非常に快適に終わります。

レーザー光線で血管と神経を熱処理しながら手術しますが、正常細胞への熱損傷は最低限に抑える機能があるので非常にスムーズに終わります。ほとんど出血しません。術後の腫れも最小限です。適切に全身投与の鎮痛剤と局所麻酔を併用すれば痛みを最小限に抑えられます。さらに痛みを軽減させるために術後は2日ほどテーピングをします。2泊程度入院が必要となります。炭酸ガスレーザーの導入で抜爪手術は猫ちゃんにも病院にも非常に快適になりました。

猫 抜爪 術後手術直後です、炭酸ガスレーザー手術ならほとんど出血しません。術後は腫れ痛みを抑えるためにテーピングをします。手術後から7日ほどエリザベスカラーをします

つめ爪は一生再生しないように根元から摘出します。

 

よくある質問に、本当に痛くないのか!?と、こちらは手術2日後でテーピングを外した後の様子です。少々腫れはありますが、猫さんはリラックスしてゴロゴロ喉を鳴らし顎を摩ると気持ち良さそうにします。個体差はあるでしょうが苦痛の表情ではありませんね。

猫 抜爪 術後

 

賛否両論ある猫さんの抜爪術ですが、このように炭酸ガスレーザーを使用すればスムーズに終わります。本院では積極的にオススメしております。

猫さんの爪切りでお悩みの方、お気軽にご相談ください。(現在は習志野市・船橋市・千葉市の一部の患者様に限定しております)

猫 抜爪手術 費用総額(入院手術退院まで)両前脚両後脚、計18本で8〜10万円程度 税別(体の大きさによる)

避妊去勢手術と同時手術も可能です。(その場合は避妊去勢料金プラス7〜9万円) 税別

 

投稿者: アプリコット動物病院

2017.10.13更新

2017年9月末、炭酸ガスレーザーを導入しました。

今後は全ての外科手術に炭酸ガスレーザーを使用していきます。

炭酸ガスレーザー

炭酸ガスレーザーとは レーザー光線を直接細胞に照射し、瞬間的に細胞を沸騰蒸発させることで手術していく機械です。

それにより 微小血管 毛細血管 神経 リンパ管 を熱処理しながら手術できるので、

出血が少ない・手術後の痛みや腫れが少ない・手術時間が短縮できる・入院期間も短縮できる 

の効果があります。

今までの手術ではメス刃で手術して出血は電気メスで処理していましたが、、、

メス刃による手術は スパッと切れるので周囲の正常細胞へのダメージはありませんが、当然出血しますし、神経リンパ管も切断するので痛みや腫れも出ます。

電気メスによる手術は 電流を体に流しその熱で細胞を沸騰蒸発させていくので、止血は出来ますが周囲の正常細胞への熱ダメージがあり、術後痛みや腫れが出ますし、手術部位の治癒も遅れます。

半導体レーザーによる手術も、一応レーザーとは言われていますが、レーザーまず金属チップに当てその金属の熱で細胞を沸騰蒸発させていく(ハンダコテと同じ原理)ので、電気メス同様に止血は出来ますが周囲の正常細胞への熱ダメージが出て痛みや腫れ傷の治癒期間の延長があります。

本院の炭酸ガスレーザーはスーパーパルスモードが搭載されています。それは常にレーザーが出っ放しではなく瞬間的にレーザーを照射し瞬間的に止めるを繰り返し、周囲の正常細胞に瞬間的でも冷却時間を与えながら手術できるので、さらに周囲の正常細胞への熱ダメージを抑えてくれます。

 

メス刃通常のメス刃による手術。当然出血しますし痛み腫れも出ます

炭酸ガスレーザー炭酸ガスレーザーのスーパーパルスモードによる手術。出血はゼロで周囲の正常細胞への熱ダメージによる焦げ付きも最小限です。猫の避妊手術写真ですが、炭酸ガスレーザー使用により親指1本程度の傷でできます。

炭酸ガスレーザーを使用すれば、出血をガーゼで拭く必要もありませんし電気メスで血管を処理する必要もないので、手術時間が短縮できます。手術部位の治癒もメス刃手術に比べ大差ありません。

今後は全ての外科手術にこの炭酸ガスレーザーを使用していきます。

投稿者: アプリコット動物病院

2017.04.08更新

フィラリア症とは犬、稀に猫の心臓や肺動脈に寄生する寄生虫のことです。蚊の吸血により犬から犬へと感染が広がっていく寄生虫です。近年ではジカ熱やデング熱が蚊が媒介する感染症ということで話題になりましたが、フィラリア症は海外の蚊ではなく日本にいる蚊が媒介します。ウイルスではなく寄生虫であり、大きい成体では20cmを超えることもあります。犬や猫に心臓病や時に突然死を起こすとも言われている怖い病気です。

全ての蚊がフィラリアを持っているわけではなく、運悪くフィラリアを持っている蚊に刺されると吸血の際にフィラリア幼虫が犬や猫の血管内に侵入し感染します。

犬や猫の体内に侵入したフィラリア幼虫は脱皮をしながら犬や猫の皮膚の下を数十日かけてゆっくり移動します。数十日かけて成長したフィラリアは大きな血管に侵入し、やがて心臓や肺動脈に到達し成虫となり、そこで交尾をしてフィラリア幼虫を産み出します。

産み出されたフィラリア幼虫は心臓や肺動脈から出て全身の血管内を循環するようになり、蚊に吸血される際に吸い上げられ蚊の体内に移動して、また別の犬を吸血する際に犬の体内に侵入する、、、というのがフィラリアの感染サイクルになります。

感染してもすぐに心臓病や突然死を起こすわけではありません。感染してから数十日は皮膚の下を移動するので症状を示すようになるのは心臓や肺動脈に寄生してからです。

心臓に寄生しても一般的にはしばらくは無症状で、じわじわと数年かけて血液循環/心臓機能を障害し、やがて咳や疲れやすくなる、循環障害からお腹に水が溜まるなどの症状を示すようになります。多くの犬のフィラリア症はこのタイプの慢性フィラリア症です。

しかしながら中には急性フィラリア症もあります。原因はわかっていませんが本来肺動脈に寄生しているフィラリアが心臓内に落ち込むことで急速に循環状態/心臓機能を悪化させ、急な貧血、立てない、赤い尿などを示し、数日で亡くなってしまうこともあります。

猫ちゃんの場合は、一般的にフィラリア幼虫が体内に侵入しても猫ちゃんの免疫により幼虫は死滅すると言われています。しかし極めて稀ですが、免疫の弱い猫ちゃんは心臓や肺動脈にフィラリアが寄生してしまい、咳、食欲不振、などの症状を示し、稀に突然死もあるようです。

一度感染されると駆虫は大変で、外科手術で肺動脈からフィラリアを摘出するか長期にわたる内服や注射で駆虫するという方法になります。

ですのでフィラリア症は予防が大事なんです。予防は蚊が出始めて一ヶ月後の5月から蚊がいなくなって一ヶ月後の12月までの間、月に一回お薬を飲ませるだけで予防できます。

予防薬にも色々な種類があり、フィラリアだけにターゲットを絞った安価な錠剤や、お腹の寄生虫も同時駆虫できるジャーキータイプものや、ノミやマダニも同時駆虫できる便利なオールインワンタイプもあります。どうしても飲ませるのが困難な場合は背中に垂らすタイプや注射で予防することもできます。

予防薬は一ヶ月効いて感染を防ぐわけではありません、感染したフィラリア幼虫が皮膚の下を移動している数十日の間に飲んだ薬が幼虫を死滅させるというメカニズムです。ですので蚊が出始めてから1ヶ月後から蚊がいなくなって1ヶ月後が予防期間なのです。

首都圏近郊では予防が普及してあまり見ない病気となりましたが、本院でも毎年1頭位は感染確認されます。内服が苦手な子はお肉タイプのお薬や背中に垂らすタイプや注射もあります。しっかり予防するようにしましょう。

 

投稿者: アプリコット動物病院

2017.03.25更新

今年も狂犬病予防注射のシーズンがやってきました。

狂犬病は日本での発生はもう40年以上ありません、日本は世界でも数少ない狂犬病清浄国です。しかし主に東南アジアでは日常的な病気で、お隣の韓国では数年前にも発生があり、中国では毎年1000人以上の方が、インドでは毎年1万人以上の方が狂犬病で亡くなってしまうそうです。

狂犬病はワンちゃんだけではなく、ほぼ全ての哺乳類に感染します(犬 猫 人間 牛 馬など)。感染ルートは、狂犬病を持っている動物に噛まれることで感染します(唾液中に大量のウイルスが含まれるので、唾液が目や口に入ルコとで感染する可能性もあるそうです)。ですので海外でも野良犬などの野生動物に近づかなければ、まず感染することはありません。

しかしながら、狂犬病が何より恐ろしいのはその致死率です。狂犬病は感染して発症するとほぼ100%死亡します。死亡率100%の感染症は狂犬病だけです。過去に世界を震撼させたエボラ出血熱でも致死率は80%です。感染ルートは限定されていますが致死率100%は恐ろしいですね。

日本は島国という利点で、この致死率100%の狂犬病を抑えていますが、例えば海外からの密輸動物、貨物に混入したコウモリや猫、渡航者のペットの不法上陸などで狂犬病の日本侵入の可能性もゼロではありません。

日本はこの恐ろしい狂犬病の流行を抑えるために 狂犬病予防法 という法律あり、生後91日以上のワンちゃんは狂犬病予防注射を打つ義務があります。猫やタヌキ、ハクビシンなんかも感染しますが、日本では人間に一番身近な動物である犬に注射を義務付けています。

狂犬病予防注射は年に1回の注射です。残念ながら副作用が全く無いわけではありません、極めて稀に狂犬病予防注射でアレルギーが出て、注射後に嘔吐や下痢などが認められた例もあります。しかし他の一般的予防注射(混合ワクチン)に比べれば発生率ははるかに少ないです。

よく飼い主様に、うちの子もう年だから狂犬病打たなくてもいい?という質問を受けます。一般的に狂犬病予防注射を免除できる動物は、抗がん剤や免疫抑制剤を使用中で免疫バランスが不安定な子、病気や加齢で寝たきりで散歩にも行か無いので他の子を咬む心配の無い子、以前に狂犬病注射でアレルギーを起こしたことのある子、です。高齢であっても元気にお散歩に行っている子は打つ義務がありますので必ず打つようにしましょう。

狂犬病予防注射が打てない、打つ必要がないと獣医師が判断した場合には 狂犬病予防注射猶予証 を発行いたします。この猶予証があれば打たなくても問題ありません。

狂犬病予防注射は注射したら終わりではなく、市役所への申請が必要になります。本院は船橋市/習志野市にお住いの方に限り、市役所への申請を無料代行しています。

また本院はペットホテルやシャンプーカット(トリミング)と同時に注射もしています。ペットホテルではタイミングを見て体調の良さそうな時に、シャンプートリミング時は終了後にワンちゃんが落ち着いてから注射しています。お気軽にお申し付けください。

 

狂犬病予防注射:2900円   市役所からの注射済票発行代:550円   船橋市/習志野市市役所への手続き代行手数料:0円

 

 

投稿者: アプリコット動物病院

2017.02.15更新

今回は前回に引き続きウサギさんのお話です。前回、ウサギさんの体調不良や食欲不振は80%が胃腸の問題であり10%が歯の問題、10%がその他臓器である、とお話ししました。前回は胃腸の問題である毛球症をお伝えしましたが。今回は歯の問題をお話しします。

ワンちゃんや猫ちゃんは少し噛んですぐに飲み込みます、雑食〜肉食獣だからです。ワンちゃん猫ちゃんは虫歯で歯が折れたり、加齢で歯が抜けても食事を噛まずに飲み込むことで生きていけます。歯石でグラグラしている歯は抜いても問題ありません。

しかしウサギさんの歯のメカニズムは繊細で歯が痛くなり問題が出てくると食べれなくなって最終的に死に至ります。

ウサギさんは完全草食動物なので生きていくために食物繊維が大量に必要です。ウサギさんは硬い牧草をたくさん食べてしっかり消化できるように、牧草を前歯で細かく切り刻み奥歯ですり潰して飲み込みます。そのためウサギさんは前歯も奥歯も全ての歯が一生伸び続けます。硬い牧草を食べ続けるために歯がすり減ってもすぐに伸びてくるので歯が無くなってしまうことはありません。逆の言い方をすると、柔らかいものばかり与えていて歯が削れないでいると歯が伸びすぎてしまうのです。歯が伸びすぎると食べることが出来なくなってしまいます。ウサギさんの歯はとても繊細で大切なんです。

ウサギさんの歯は1ヶ月に1cm伸びるとも言われています、野生のウサギは移動中でも草や木の皮を常に齧って歯の伸びすぎを防いでいるとも言われています。飼育下での場合も同様に常に何かを齧っていられる環境を与える必要があります。すなわち硬い牧草を食べ放題にし、様々な齧り木をケージに設置し、柔らかい生野菜やオヤツ類の多給を避けるようにします。逆に固すぎる金網ケージをガリガリ齧ってばかりいると前歯の歯根が痛み曲がって伸びてしまいます。

歯が伸びすぎると、前歯が伸びすぎるとうまく食べ物を口に入れることが出来なくなります、奥歯が伸びすぎると口の中が傷ついてヨダレが出たり痛がったりします。痛みからさらに柔らかい食べ物を好むようになります。ますます歯が削れなくなって正常な歯も伸び過ぎてきてしまいます。

ウサギ 切歯過長下の前歯が伸びすぎです。

ウサギ 切歯過長 処置後こんな感じで切ってあげます。前歯なら無麻酔で簡単に切れます。

ウサギ 不正咬合この子は下の歯が前側に向かって生えてしまっているため、一生定期的にカット(無麻酔)しなければならないでしょう(1〜2ヶ月に一度くらい)。あるいは全身麻酔をかけて歯を抜いてしまうテクニックもありますが、、、。

前歯の問題は飼い主様がご自宅で見て、ある程度は判断できると思いますが、問題は奥歯です。奥歯はかなり伸びすぎて実際に口腔内を傷つけない限り症状が出ないのでなかなか発見できません。さらに病院でもウサギさんの奥歯は小さい口の奥の方にあるので無麻酔では異常発見が困難な場合もあります。

明らかにヨダレがダラダラ出ていて、口を触ると痛がれば、奥歯の伸びすぎであることは明白です。しかしほんの少しの奥歯の伸びすぎでヨダレが少ないものや美味しいものなら食べるけど主食は食べないといった場合は、無麻酔検査では異常が検出できないこともあります(奥歯はとても奥にあり小さいし舌もモゴモゴ動いて異常検出しづらいのです)。また胃腸が問題でもそのような症状が出るため、まずは胃腸の治療をして様子を見ることもあります。あまり改善なければ麻酔をかけて口をガバッと開いて奥歯をチェックします。

ウサギ臼歯不正咬合奥歯の伸びすぎを麻酔下でチェックしてます、矢印の先のとんがっている歯が舌を傷つけていました。前臼歯ではなく後臼歯でした。手前のボヤけているのが私の親指なので奥歯がいかに小さく奥にあるかわかると思います。カットして整えれば食欲は劇的に改善します。

ウサギ臼歯抜歯

 

別の子です、右上顎後臼歯、左下顎後臼歯が伸びすぎです、舌には潰瘍ができてました。これらの歯はグラグラ動揺していたため、痛みの除去を目的とし抜歯しました。

ウサギ臼歯抜歯後

抜歯しました。痛み止めと胃腸の動きを活性化する注射をして基本的に日帰りです。処置前まで全く食べなかったのに翌日からバクバク食べたようです。この子も様子により定期的に麻酔下で奥歯の処置が必要になるかもしれません。

ウサギさんは歯の伸びすぎで食欲がなくなりますが、一般的に治療に対する反応は良好で、歯を抜いてもその日のうちか翌日には食欲が戻ります。

また歯の伸びすぎでヨダレが出ると、ヨダレによる皮膚炎が問題になることもあります。さらに非常に難しい問題なのですが、歯が口の中側に伸び過ぎるのではなく、歯が顎の骨側(歯の根っこ側)に伸びることがよくあります。その場合下顎であれば顎が腫れてくるといった症状を示し、上顎であればなんと眼球や涙管に問題が及び、目が飛び出してきたり、目から膿が出てきたり、涙が止まらなくなったりします。そうなってくると抜歯しても症状が治らなくなることもあります。

これらの歯の問題は食生活が大きく影響してます。すなわち柔らかい葉物やオヤツ類を日常的に与えるのは控えましょう。ロングタイプの牧草を常に齧れるように食べ放題を推奨します(ペレットの量を調整すれば太りません)。様々な種類の齧り木をケージに設置しましょう。固すぎる金網ケージをガリガリ齧らせないようにしましょう。

 

前歯(切歯)の不正咬合カット 基本的に無麻酔で500円〜1000円

奥歯の不正咬合カット 基本的に麻酔下で費用総額18000円〜30000円(血液検査レントゲン代込み)(抜歯の有無本数による)(定期的カットが必要になったら割引あり)

 

 

 

 

投稿者: アプリコット動物病院

2017.02.15更新

今回はウサギさんの食欲不振のお話です。

ウサギさんが体調悪そう、元気が無い、食欲がない、などといった症状の場合は一般的に80%が胃腸の問題だと言われています。残り10%は歯の問題で、残りの10%はその他の臓器が問題です。

今回はウサギさんの体調不良の80%の原因をしめる胃腸の問題(消化器失調)のお話です。

完全草食動物であるウサギさんは胃腸及び腸内細菌が命であり、チョットした事ですぐに胃腸の調子が崩れます。すなわち食事の急な変更、食べなれないオヤツの多給、段ボールやカーペットなど異物の誤食、様々なストレス、などが原因として考えられます。しかし最も多いであろう原因は日常の毛づくろい時に自身の毛を飲み込んでしまい、その毛玉によって胃腸の調子が崩れる事です。

ウサギさんは完全草食動物であり、その胃腸の構造から吐き戻すという行為ができません。猫ちゃんなら飲み込んだ毛玉は吐き戻すことができますが、ウサギさんは飲み込んでしまった毛玉は吐き戻すことができず、便から出すだけになります。そのため、あまりに多くの毛玉を飲み込んでしまうと胃腸の調子が崩れ、最悪の場合、胃腸が完全に詰まってしまう事もあります。

胃腸の流れが悪くなると、当然食欲や元気が無くなります、また便の粒の大きさが小さくなり繋がって出てきたり量も減ってきてます、お腹が痛いのでお腹を床に擦り付けたりする行為をする事もあります。

ウサギ正常腹部正常ウサギのレントゲンです、胃の大きさは空腹時であればこの程度ですし、食後なら肋骨の切れ端から胃が少し出る程度です。

ウサギ毛球症レントゲン胃腸閉塞のレントゲンです、丸2日食べてないのに胃がパンパンに膨れています!二日前に食べたご飯が胃から小腸に流れないでいるのです!!胃腸の流れが停止ているのでしょう。かなり危険な状態です。

治療方針は、今にも破裂しそうでなければ、まずは内科治療から入ります。胃腸の動きを活性化する注射と水分補給の点滴をします(点滴は脱水症状の改善と血液量を増やし胃腸への血流を増やすのが目的です)。なるべく通院してもらいます、病院に入院することがストレスになりますので連日通院可能であれば通院で治療します。食欲が戻るまで2日でも3日でも連日通院してもらいます。食欲が出るまではとにかく何でも美味しいものを与えてもらいます、第1選択はセロリやブロッコリーの茎や大根の葉の部分です、これらは食物繊維が豊富でウサギさんの栄養バランスをよく満たしてくれるからです、しかしそれを食べない場合は第2選択はレタスやキャベツなどの葉物です、それもダメなら第3選択にニンジンやサツマイモやリンゴなどを与えてもらいます、さらにダメならウサギ用ビスケットやドライフルーツを与えます(日常的に与えるのはヤメましょう、病気の時だけ与えましょう)。とにかく胃腸をドンドン動かさないといけませんから何でも与えてもらいます。便が出るようになって食欲が50%を超えてきたらあとは飲み薬に切り替えて通院終了です。

この治療で実に90%以上の確率で治ります(私の経験上)!早ければ次の日には食欲が戻る子もいますし、時間がかかる場合には2〜3日かかりますが90%の症例でこの単純な内科治療で治っています。上のレントゲンの子も3日ほどの通院で食欲が出てきました!

しかしながら、中には内科治療に全く反応しない症例もいます、そうなると外科手術で胃腸の閉塞を解除しないと助かりません!!

本院ではまずは内科治療を1〜3日試みます。全く回復の兆しがなく元気が無くなっていくのに内科治療をだらだらやっていてはいけません。外科手術に踏み切る前にバリウムを少しだけ飲ませて胃腸の流れを画像で確認します、そしてバリウムが全く動かない場合は完全閉塞ということになります。

ウサギ バリウムバリウムを飲ませて24時間経過したレントゲンです。

バリウムが全く胃から出て行きません。胃の膨らみ具合は先ほどのレントゲンの子ほどではありませんが、完全閉塞しているようです、手術をしないと次第に衰弱し亡くなってしまうのは明白です。

ウサギ毛球症手術全身麻酔下でお腹を切り開いて、胃を切開して中の毛玉を摘出して胃腸の開通性を確認し洗浄して閉じます。

ウサギ毛球症手術後取り出した毛玉です。3−5日入院し、食欲が安定したら退院です。

ウサギさんは基本的に春と秋に換毛期を迎えます。換毛期にはたくさん毛が抜けます、それを飲み込んでしまい胃腸の調子が崩れるので、特に換毛期にはたっぷりブラッシングして飲み込んでしまう毛玉を少しでも減らしましょう。長毛種のウサギさんは常日頃からブラッシングをよくしましょう。

ウサギさんは完全草食動物であり、メインとなる必要栄養素は食物繊維です。食物繊維含有量の多い牧草とウサギ用ペレットと水があれば実は生野菜は与えなくても全く問題ありません。しかしながらオヤツとして生野菜を与えるならば前述した通り食物繊維の豊富なブロッコリーの茎やセロリや大根の葉の部分がおすすめです。キャベツやレタスなどの葉物は食物繊維があまり豊富とは言えませんし柔らかくて歯の健康にも疑問です。ウサギ用ビスケットやドライフルーツなどはあまり食物繊維が多くないですし甘く柔らかいのでウサギさんに適したオヤツとは言えません。与えすぎに注意しましょう。あとは適度な運動と様々なストレスを減らす工夫をして消化器失調を予防していきましょう。

ウサギ 毛球症 胃切開手術 3〜7日入院 費用総額 10万円程度 

投稿者: アプリコット動物病院

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