症例集

2017.04.08更新

フィラリア症とは犬、稀に猫の心臓や肺動脈に寄生する寄生虫のことです。蚊の吸血により犬から犬へと感染が広がっていく寄生虫です。近年ではジカ熱やデング熱が蚊が媒介する感染症ということで話題になりましたが、フィラリア症は海外の蚊ではなく日本にいる蚊が媒介します。ウイルスではなく寄生虫であり、大きい成体では20cmを超えることもあります。犬や猫に心臓病や時に突然死を起こすとも言われている怖い病気です。

全ての蚊がフィラリアを持っているわけではなく、運悪くフィラリアを持っている蚊に刺されると吸血の際にフィラリア幼虫が犬や猫の血管内に侵入し感染します。

犬や猫の体内に侵入したフィラリア幼虫は脱皮をしながら犬や猫の皮膚の下を数十日かけてゆっくり移動します。数十日かけて成長したフィラリアは大きな血管に侵入し、やがて心臓や肺動脈に到達し成虫となり、そこで交尾をしてフィラリア幼虫を産み出します。

産み出されたフィラリア幼虫は心臓や肺動脈から出て全身の血管内を循環するようになり、蚊に吸血される際に吸い上げられ蚊の体内に移動して、また別の犬を吸血する際に犬の体内に侵入する、、、というのがフィラリアの感染サイクルになります。

感染してもすぐに心臓病や突然死を起こすわけではありません。感染してから数十日は皮膚の下を移動するので症状を示すようになるのは心臓や肺動脈に寄生してからです。

心臓に寄生しても一般的にはしばらくは無症状で、じわじわと数年かけて血液循環/心臓機能を障害し、やがて咳や疲れやすくなる、循環障害からお腹に水が溜まるなどの症状を示すようになります。多くの犬のフィラリア症はこのタイプの慢性フィラリア症です。

しかしながら中には急性フィラリア症もあります。原因はわかっていませんが本来肺動脈に寄生しているフィラリアが心臓内に落ち込むことで急速に循環状態/心臓機能を悪化させ、急な貧血、立てない、赤い尿などを示し、数日で亡くなってしまうこともあります。

猫ちゃんの場合は、一般的にフィラリア幼虫が体内に侵入しても猫ちゃんの免疫により幼虫は死滅すると言われています。しかし極めて稀ですが、免疫の弱い猫ちゃんは心臓や肺動脈にフィラリアが寄生してしまい、咳、食欲不振、などの症状を示し、稀に突然死もあるようです。

一度感染されると駆虫は大変で、外科手術で肺動脈からフィラリアを摘出するか長期にわたる内服や注射で駆虫するという方法になります。

ですのでフィラリア症は予防が大事なんです。予防は蚊が出始めて一ヶ月後の5月から蚊がいなくなって一ヶ月後の12月までの間、月に一回お薬を飲ませるだけで予防できます。

予防薬にも色々な種類があり、フィラリアだけにターゲットを絞った安価な錠剤や、お腹の寄生虫も同時駆虫できるジャーキータイプものや、ノミやマダニも同時駆虫できる便利なオールインワンタイプもあります。どうしても飲ませるのが困難な場合は背中に垂らすタイプや注射で予防することもできます。

予防薬は一ヶ月効いて感染を防ぐわけではありません、感染したフィラリア幼虫が皮膚の下を移動している数十日の間に飲んだ薬が幼虫を死滅させるというメカニズムです。ですので蚊が出始めてから1ヶ月後から蚊がいなくなって1ヶ月後が予防期間なのです。

首都圏近郊では予防が普及してあまり見ない病気となりましたが、本院でも毎年1頭位は感染確認されます。内服が苦手な子はお肉タイプのお薬や背中に垂らすタイプや注射もあります。しっかり予防するようにしましょう。

 

投稿者: アプリコット動物病院

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