今回はワンちゃんの精巣癌です。片玉(停留精巣、陰睾丸)のワンちゃんはほぼ全ての子が精巣癌になると言っても過言ではありません。また通常の精巣でも精巣癌は発生します。
ワンちゃんの精巣癌は一般的に3種類のタイプがあって、精子を作る細胞の癌(精細胞癌)。精子に栄養を与える細胞の癌(セルトリ細胞腫)。精細胞やセルトリ細胞を支える役割の細胞の腫瘍(間質細胞腫)。となります。
それぞれ特徴があります。
間質細胞腫の半数は両方の精巣に発生します、精巣が大きくなるだけで特に症状は出ません、基本的に良性腫瘍であり外科手術で適切に摘出すれば完治します。
精細胞癌とセルトリ細胞腫はほぼ片側精巣だけに発生しますが稀に両側精巣に発生します。精細胞癌とセルトリ細胞腫は悪性腫瘍であり転移率は5〜10%程なので、大半は手術で完治が狙えます。精細胞癌とセルトリ細胞腫の症状は初期は同じく精巣が腫れるだけで無症状ですが、進行するとなんと精巣が女性ホルモンを作ってしまい、体つきが雌化(左右対称性に被毛が薄くなったり、乳房が大きくなってきたり)する事があります、また女性ホルモンにより貧血になったりもします。かなり巨大化した精細胞癌やセルトリ細胞腫で検査でリンパ節転移や血管の中に癌細胞が入り込んでいる所見が得られたら、手術後に抗癌剤も考えます。腹腔内停留精巣のワンちゃんはほぼ精細胞癌かセルトリ細胞腫の確率が高くなります。
手術はこんな感じです。精巣腫瘍は確実に摘出するため精巣を包む袋(陰嚢)ごと摘出します。そんなに大変な手術ではないので大きな問題がなければ基本的に日帰り手術です。この子は間質細胞腫だったのでこれで完治です。
しかし、腹腔内停留精巣癌の場合は開腹手術になり、別次元の手術となります。かなり巨大化して周囲へ癒着/腹膜炎を起こしているような場合は入院が必要になります。
男の子のワンちゃんなのに乳首と乳房が腫れて雌性化してしまっています。腹腔内ある精巣癌が女性ホルモンを作っているからです。
下の丸いのは膀胱で、その上が精巣癌です。癒着や腹膜炎はありませんでした。
停留精巣/陰睾丸のワンちゃんは精巣癌になる確率が通常の10〜20倍とも言われています。停留精巣/陰睾丸のワンちゃんは癌になってしまう前に精巣摘出手術を必ず受けるようにしましょう。
精巣癌は転移率が低いため、外科手術単独で完治が狙えます。精巣の大きさの左右不対称に気づいたら積極的に手術するようにしましょう。
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精巣癌摘出手術 通常位置にある場合 基本的に日帰り手術 費用総額 4〜6万円
精巣癌摘出手術 腹腔内にある場合 状況により1〜3日入院 費用総額 10〜12万円(腫瘍の大きさ、周囲組織への癒着状況による)