症例集

2016.09.15更新

今回はウサギさんの去勢手術と避妊手術についてです。

ワンちゃんネコちゃん同様に、去勢手術は精巣摘出手術で避妊手術は卵巣子宮全摘出手術となります。

男の子の去勢手術の目的は繁殖を防ぐことですが、主たる目的は精巣を摘出することで男性ホルモンを減らし縄張り意識を抑えることにより、尿マーキング行動や攻撃行動を制限することになります。また発生は稀ですがウサギさんの精巣癌を防ぐことにもなります。

女の子の避妊手術の目的は繁殖を防ぐことですが、主たる目的は子宮関連疾患の予防です。以前の症例紹介http://www.apricot-ah.jp/blog/2016/04/post-5-211048.htmlでも紹介させていただいたように、女の子ウサギは高齢になってくると非常に高確率で子宮癌になります。その確率は高齢女の子ウサギの4頭に1頭とも言われています。さらに子宮癌以外にも子宮内膜炎・子宮水腫といった子宮疾患もあり、こう言った病気も含めると子宮関連疾患には本当に高確率でなるのです。卵巣子宮を摘出することでこういった子宮関連疾患を確実に防げます。また女の子ウサギでもホルモンの影響で攻撃行動が出ることがありますが、それも制限できます。

デメリットは何と言っても麻酔です。草食動物であるウサギさんの麻酔はワンちゃんネコちゃんに比べとってもデリケートです。麻酔の入りかけ(麻酔導入)に呼吸が停止したり、麻酔の覚めかけに意識障害からパニックを起こし突然心肺停止をしたり、ということが実際起こります。しかし近年様々な麻酔注射が開発され、それらを複合して使用することで安定した麻酔導入が得られるようになり、麻酔の覚めも穏やかに覚醒するようになりました。またウサギさんは喉が狭いため昔は困難だった気道確保を容易に行える気道チューブも発売され、人工呼吸も容易に行えるようになり麻酔中の呼吸管理が極めて安定するようになりました。麻酔モニター機械の精度も向上し、体の小さいウサギさんでも麻酔中の体の状態を詳細にモニタリングできるようになりました。

こうして昔に比べるとウサギさんの麻酔管理技術はかなり向上したと言えますが、それでもやはり草食動物であるウサギさんはイレギュラーな麻酔関連アクシデントがあり、手術後に急変してしまう例はあります。あるウサギ専門病院の先生によると草食動物であるが故の痛みや恐怖による交換神経性心停止(アドレナリンショック)、麻酔前検査では検出しきれない心筋症や胃潰瘍などによって術後に急変してしまうケースがあるのです。

こういった麻酔関連の問題を考えると手術を実施すべき年齢は当然若いうちが良いでしょう。一般的にウサギさんの平均寿命は7歳程度であり少なくとも4歳半までには済ませたいものです。生後6ヶ月齢から4歳半までに実施することをお勧めいたします。

ウサギ気管ウサギの気道チューブによる気道確保です。

このチューブのおかげで呼吸管理が極めて安定するようになりました。

ウサギ去勢手術ウサギ去勢後

男の子ウサギの去勢手術の手術前と手術後です。去勢手術は極めて簡単で手術時間は左右精巣合わせて15分程度です。傷口が小さいので去勢手術は傷の縫合はしません。手術後のエリザベスカラーやテーピングも必要ありません。

ウサギ避妊手術後こちらは女の子の避妊手術後です。(この写真は同時に乳癌切除もしたので傷が2箇所あります)

避妊手術の所要時間は30〜45分位です。避妊手術はお腹を切り開くため手術後には傷口を縫合します。縫合部はテーピングをしたり洋服を着せたりして傷を舐めさせないように保護します。10日前後で抜糸(抜糸に麻酔は必要ありません)が必要になります。

去勢手術は基本的に日帰り手術。避妊手術は日帰り〜1泊入院になります。

ウサギさんの去勢手術・避妊手術でお困りの方、お気軽にご相談ください。

 

 

 

投稿者: アプリコット動物病院

メールでのお問い合わせ