症例集

2016.09.22更新

今回は猫ちゃんの心臓病のお話です。

心臓は人間と同じように4つの部屋に別れています。

肺から酸素化された血液を受け取る左心房。

左心房から酸素化された血液を受け取り、それを全身に送る左心室。

全身から二酸化炭素化された血液を受け取る右心房。

右心房から二酸化炭素化された血液を受け取り、それを肺に送る右心室。

下の画像は正常な猫ちゃんの心臓の内部構造を示した超音波画像とその動画です。

猫 正常心エコー

 

猫 正常 心臓 

健康な猫ちゃんの心臓はダイナミックに動きます。生命の力強さを感じますすね。

 

心筋症とは、心機能障害を伴う心筋疾患 と定義され、

左心室の壁がぶ厚くなってしまう肥大型心筋症。

左心室の壁が薄くなってしまう拡張型心筋症。

左心室の動きが鈍くなってしまう拘束型心筋症。などなど様々に分類されます。

原因は遺伝、栄養不足、感染症、など様々に言われていますが、詳細なことは分かっていないのが現状です。若い子も高齢の子も同じようになってします可能性があります。

 

症状は非常に悩ましく、ある程度進行するまでは無症状であることが殆どなのです。進行してくると、運動しなくなったり、食欲落ちたりします。さらに進行して末期的になると、ハアハア呼吸が荒くなったり 、失神したり、ぐったりしてきます。

食欲が落ちたり元気が無くなったりしても、歳のせいと思われて発見が遅れることが多くあります。末期になってようやく目に見える症状が現れ、飼い主様が気づくケースが多いです。ここが猫ちゃんの心筋症の怖いところだと思います。中には末期になって呼吸困難になる前日まで食欲が落ちなかった子もいます。

末期になると胸の中に水が溜まったり(胸水)、肺の中に水が溜まったり(肺水腫)、などして急死することもあります。

猫 正常胸部レントゲン猫胸水

健康な子の胸部レントゲンと胸水が溜まった子のレントゲンです。健康な子は肺は黒々として美しく中央の心臓も綺麗に見えますが、胸水が溜まると黒い肺が小さく潰れてしまい心臓も不明瞭になります。この子の胸からは200cc弱の胸水が溜まってました。ここまで胸水が溜まると死ぬほど苦しいでしょう。すぐに酸素吸入して胸に針を刺して胸水を抜いてやらなくてはいけません。

 

猫 拡張型心筋症

こちらは 拡張型心筋症の猫ちゃんの超音波画像です。左心房も右心房も著しく拡張し、全身に酸素化された血液を送る大切な左心室の壁が薄くなってしまい殆ど動いていません。

猫肥大型心筋症

 

こちらは肥大型心筋症の猫ちゃんの超音波画像です。ノイズが多く分かりづらいですが、左心室の壁がぶ厚くなって動きが鈍く、左心室内腔があまり広がりません。

 

このように心筋症と言っても型により病態メカニズムは全く変わってきます。当然治療も異なります。

拡張型心筋症は心筋が動くように強心剤などを使い、逆に肥大型心筋症は筋肉を薄くさせるために心臓の動きを穏やかにさせるようなお薬を使ったりします。

レントゲンや心臓超音波検査でしっかり病態を把握し、それぞれの病態に合わせた治療が必要になります。

 

前述のように猫ちゃんの心筋症は病態が進行しないと症状が現れないので早期発見には定期的な健康診断が必要になります。

なんだか元気がない、寝てばかりいる、などの症状で心臓に問題がある場合があります。心筋症でお困りの方、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

投稿者: アプリコット動物病院

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