今回は猫さんの口内炎(口腔粘膜炎・歯肉炎・舌炎などを含む)です。
猫さんの口内炎はバイ菌感染やカビの感染、猫エイズ白血病ウイルス感染による免疫力低下などが基礎になって起きます。症状としては口の中の粘膜が真っ赤な炎症を起こし、痛みから食欲不振になり、悪臭あるヨダレを垂らし、口周囲がひどく汚れます。一度口内炎になると自然治癒することは稀で、ほとんどが慢性経過をたどり終生にわたり症状を示します。
治療法は内科療法として抗生物質や消炎鎮痛剤やステロイド投与やレーザー照射などで痛みを抑える方法が主流ですが、しかしながら根本的な治療ではなく症状を抑えるだけの治療なので、終生にわたる治療が必要になります。外科療法では歯石除去や原因となっている歯を抜く方法がありますが、あまり完治に至らず痛みが残ることがしばしばです。
今回は完治を目的として歯を抜いた後に感染の及んでいる顎の骨を削り、炎症を起こしている歯肉を切除して綺麗な粘膜で縫い合わせる手術を実施しました。
痛みで舌が出っ放しで食べたくても食べれず、悪臭あるヨダレにより口周囲が汚れています。
痛くて食べれないというのは見ていてとてもかわいそうです。表情も暗いです。
歯石が重度に付着し、激しい歯肉炎を起こしています。
原因の歯を全て抜歯し、炎症を起こしていた歯肉を切除して、感染を起こしている顎の骨をドリルで削りました。
綺麗な粘膜で縫合します。歯が全て無くなりますが、猫さんは本来は肉食獣なのでゴハンをすり潰して食べるということをしないので歯が無くなっても上手に飲み食い出来ます。
症例の一ヶ月後です、舌も引っ込み、ヨダレも止まり、表情も明るくなりました。おいしいご飯をバクバク食べます。痛み止めの投薬も必要ありません。生活の質は著しく向上します。
この手術後は食道チューブを設置して3~5日カテーテルで流動食を飲む生活をします。6日目位から自分の口で食べれるようになります。自分の口でバクバク食べれるようになったら食道チューブを外します。顎上下左右4カ所の手術になりますので手術時間も長くなりますが、この手術により長期にわたる痛みやヨダレ、飲み薬から解放され快適な生活が送れるようになります。歯は無くなりますがいつも通りのカリカリご飯も食べられます、口内炎の完治です。
猫 口内炎 全額抜歯 顎骨切削 食道チューブ設置 入院から退院まで(だいたい5〜10日)費用総額6〜10万円(抜歯の本数、チューブ設置の有無、入院日数による)